| 人材採用ほど、企業経営にとって、また将来の成長にとって大切なものはない。人材は企業経営の基盤づくりに不可欠であり、採用活動は営業活動と同様の労力を払う必要がある。採用をめぐる環境の変化にも注目して、採用面接では辞めない人材、役立つ人材をしっかりと見極めたい。 |
 |
|
厳しい経済状況の中、若年層の求人が激減し就職難が続いている。しかし長期的にみれば、少子高齢化が労働力市場にも大きな影響を与え、若年層の労働人口は縮小傾向にある。都市部集中もさらに進むと考えられ、地方における人材の獲得は厳しさを増しそうだ。また、右肩上がりの時代でなくなった今日、一企業に人生をゆだねることに不安を抱き、自立や自由を強く志向する若年層も多くなっている。
採用手法も変化している。人材募集告知はインターネットが主流となり、求職者は豊富な求人情報に接することができ、遠方の企業であっても就職活動を行う。採用する側にとっては、競争相手が格段に増えていることになる。
企業はこのような就職・採用環境を理解したうえで、採用に臨むことが重要だ。中小企業では特に、採用は社長の仕事と心得たい。有為な人材を口説けるだけの人間的な魅力を備えることを目標とし、説明会などにはすべて自ら出席してほしいものだ。
では、魅力的な経営者とはどのような経営者だろうか。まず、「雇ってやっている」といった意識を捨て、対等な人間同士として相手を尊重する姿勢が求められる。
さらに、自らの企業がどのような姿を目指しているのか、将来のビジョンを語り仲間を募る姿勢をとりたい。求職者はただお金を得るためだけでなく、キャリアを磨くことを目的に働きたいと願っている。企業のビジョンがこれに合致していれば、モチベーションを高く維持して働いてくれることだろう。
ビジョンは絵空事ではない。2〜3年後にはこのような姿になっているという、経営者と従業員との約束だ。それゆえ、求職者向けの説明会以前に社内にビジョンを浸透させ、すでに働いている従業員と共有する必要がある。
説明会などで自分の企業を紹介する際、ウソをつかないことも大切である。現状を率直に応募者に伝えつつビジョンを語る。さらに社風、つまりどんな行動が評価されるのかという企業独自の基準と応募者の価値観とを比較できるように、情報を提供することが説明会の重要な役割でもある。
|
 |
|
| @ |
自分の好き嫌いから離れる |
|
面接で冷静に人物を見るために、自分はどんな人が好きで、どのような人が嫌いなのかをあらかじめチェックしておくとよい。たとえば、英語に堪能な女性に弱い、同窓生や同郷の人が好き、結論から語るハキハキした人が好き…などといった好悪のリストを作ってみよう。
リストアップしてみると、実はこれらの要素は人物の優劣とはあまり関係ないことがわかるだろう。このリストを折に触れて確認し、自分自身の好悪の偏りに対して冷静になることが必要だ。 |
| A |
想像力を働かせる |
|
応募者を前にしたときに、この人物は自分の企業に来たらどのように働いてくれるだろうかと、具体的に想像してみる。手がかりとなるのは応募者の経験ではなく、その背景にある能力や素養だ。
たとえば前職で営業成績を上げることができたのか。できたとしたら、それはほかの人びとをうまく巻き込んだ結果なのかを尋ねてみる。その答えによって、応募者の仕事のやり方や協調性の有無の一端を推し量ることができるだろう。
「あなたに協調性はありますか?」と聞いても、ほとんどの人が「はい、あります」と答えるに決まっている。抽象的な質問を投げかけるのではなく、できるだけ具体的なエピソードを尋ねていくと、応募者の仕事ぶりに対するイメージができていくはずだ。こうして形づくられたイメージを自社の評価基準に照らして評価していくことで、適性を判断できる。 |
| B |
他の面接者との応答を見る |
|
社長面接の際には一対一で行うよりも、人事担当者に主な応対を任せるほうがよいケースも多い。横からやりとりを眺めると、それだけ冷静に評価・判断できるからだ。面接を終えたら、記憶が薄らがないうちに「この質問で、このような答えがあった」というように、事実に即した客観的な記録を心がける。事後に応募者同士を比較しやすいからだ。 |
|
 |
|
採用面接の目的は大別して二つある。一つは、自社の魅力を伝え、面接者自身の魅力もアピールして、不合格になる相手にも自社のファンになってもらうことだ。もう一つは、自社の求める人物像と比較検討して、応募者の人柄や性格、態度、過去の経験などから自社で活躍できる人材を見極めることである。こうした面接の二大目的「引きつける」「見抜く」を達成するために、面接の手順を組み立てよう(図表1)。
面接では、応募者がリラックスして自分らしさを出せるような雰囲気をつくることが重要だ。応募・来社のお礼に加えて、季節の話題や応募者の趣味などに触れて、緊張をほぐす時間を設ける。
その後「見抜く」ための質問に入っていく。質問では、「はい」「いいえ」で答えられる質問はなるべくしないで、「なぜそう思うのですか?」というように、話題を掘り下げていく。このとき、応募者の話に興味や関心を示し、共感することで話しやすい場づくりを心がける。
面接者は、面接においては企業の代表となる。もちろん経営者であればなおさら、その振る舞いが応募者からじっくりと見極められていると考えるべきだ。そこで、面接者のマナーも今一度見直したい(図表2)。たとえ自社の従業員とはならなくても、応募者は顧客や利用者の予備軍と考えなければならない。
採用する人材が決定した後も気を抜くわけにはいかない。従業員が企業に長く居つかない時代となっているからだ。「釣った魚にエサをやらない」などという姿勢はもってのほかだ。従業員の立場を尊重し、大切に考える姿勢を維持することはもちろん、常に一人ひとりと向かい合い、相手の目線で話を聞く時間を定期的に設けたい。
働く側の立場が強くなっている今、経営者と従業員がビジョンを共有し、同じ目標に向かってモチベーションを高めることがますます重要だ。採用活動は、こうした企業の姿勢を試される場の一つであり、採用に成功する企業こそ将来の成長を期待できる。
|
| 図表1 採用する側の面接の手順 |
 |
図表2 採用する側の面接マナーのチェックポイント |
 |